✏️ この記事の執筆者
フロル行政書士事務所(横浜)
許認可・会社設立・補助金申請・相続のご相談は
🌸 フロル行政書士事務所の公式サイトへ

「今年もこんな補助金が出ましたよ」——そんな案内を見て、「とりあえず申請しておこう」と思ったことはありませんか?
実は今、この「とりあえず補助金」という発想そのものに、国レベルで疑問の目が向けられています。今回は、財政審議会の議論や実証研究をもとに、補助金との正しい向き合い方、そして行政書士が本当にお役に立てるポイントについてお伝えします。
所長 フロル補助金の話をすると、つい『いくらもらえるか』に注目しがちですが、今日は少し違う視点でお話しします!
令和7年11月に開催された財政審議会では、中小企業向け補助金のあり方について、興味深い議論がありました。
帝国データバンクが実施した企業向け調査では、次のような声が紹介されています。
「地方の中小企業においては、補助金ありきの設備投資となっている。最近は補助率が低下していて、自己資金の負担が大きいため、どうしても消極的にならざるを得ない」(機械製造業)
「入れ替え時期をとうに過ぎている設備があるが、あと1〜2年待ったとしても、設備が高額すぎて補助金だけでは賄えず、投資判断ができない」
過大な公的支援は、補助金依存の強まりやコスト意識の低下につながり、かえって生産性向上や新陳代謝を阻害する恐れがある、という指摘です。
⚠️ ここで大切なのは、「補助金が悪い」という単純な話ではないということです。問題は、補助金を使うこと自体が目的化してしまうことにあります。
では、補助金による支援は、実際にどれほどの効果があったのでしょうか。
平時の補助金効果を検証した研究(Small Business Economics誌掲載)では、小規模事業者持続化補助金について、興味深い結果が示されています。
補助金の受給事業者と非受給事業者を比較すると、売上や生産性のアウトカムに有意な差は認められませんでした。つまり、「補助金を受け取ったこと」自体は、その後の業績を大きく左右しなかったということです。
一方で、同じ研究では、もう一つの重要な事実が明らかになっています。
申請事業者は、非申請事業者と比べて、申請年度以降の売上・生産性に有意な向上が見られました。
これは、補助金という「お金」そのものではなく、申請の過程で行う外部からの助言や経営計画の作成というプロセス自体が、事業者の生産性を高める効果として現れた、と分析されています。
💡 言い換えると、「補助金をもらえたかどうか」より、「申請を通じて、事業を見つめ直したかどうか」の方が、その後の成長に効いていた、ということです。
中小企業白書2026年度版では、「現状維持は最大のリスク」という強いメッセージが打ち出されています。稼ぐ力の強化が、賃上げ原資の確保、そして持続的な賃上げへとつながる好循環の実現が求められている、という文脈です。
そのために経営者に必要とされているのが、以下4分野の「経営リテラシー」です。
| 分野 | 内容 |
|---|---|
| 財務・会計 | 原価管理・資金繰り |
| 組織・人材 | 労務管理・組織活性化 |
| 運営管理 | 品質管理・属人化防止 |
| 経営戦略 | 経営計画策定・マーケティング |
特に、原価管理と資金繰りは、価格転嫁の説得材料にも直結する重要な要素とされています。「値上げをお願いしたいが、根拠をどう説明すればいいか分からない」という悩みも、実はこの経営リテラシーの延長線上にある課題です。
また、財政審議会では、補助金の種類が乱立し、事業者にとって制度選びが複雑で分かりにくいという課題も指摘されています(例:省力化投資補助金、デジタル化・AI導入補助金、ものづくり補助金等の違い)。補助金だけでなく、金融機関からの資金調達(デット・エクイティ・メザニン)も含めた、多角的な選択肢を検討することの重要性も強調されています。
こうした流れの中で、事業者への支援のあり方自体にも変化が求められています。
従来型の「課題解決型」支援(御用聞き・受動的に、言われたことに対応する)から、「経営力構築型」支援(対話と傾聴によって、本質的な課題への気づきを促し、能動的な行動を後押しする)への転換です。
経営者自身が本質的な課題に気づき、腹落ちすることが、その後の自走化(自ら考え、動き続けられる状態)の動機付けになる、という考え方です。
先ほどの研究結果を踏まえると、「申請書を作って出す」という代行業務だけでは、本来の価値の半分も発揮できていないとも言えます。行政書士が本当にお役に立てるのは、その前後にある「対話」の部分です。
| – | 申請代行のみ | 経営計画づくりの伴走 |
|---|---|---|
| 主な関与 | 書類作成・提出 | 事業の現状整理、課題の言語化、計画策定支援 |
| 効果 | 採択・不採択という結果のみ | 申請の有無にかかわらず、事業の見直し自体に効果 |
| 制度選び | 依頼された制度のみ対応 | 複数制度を比較し、最適な選択肢を提案 |
| 継続性 | 単発で完結しがち | 賃上げ・稼ぐ力向上という一貫したストーリーに位置づけ |
具体的には、以下のような形での伴走を心がけています。
補助金は、正しく使えば事業成長の後押しになる一方、「使うこと自体」が目的化してしまうと、本来の効果を発揮できません。
補助金の申請を検討されている方は、単に「書類を作ってもらう」という視点だけでなく、この機会に事業全体を見つめ直す伴走者として、行政書士を活用するという視点も、ぜひ持っていただければと思います。
免責事項
本記事は令和8年(2026年)時点の各種公表資料(財政審議会資料、中小企業白書、学術研究等)をもとに作成しています。政策・制度は今後変更される可能性があるため、最新情報は各公式発表をご確認ください。
参考文献:高橋・橋本(2023) “Small grant subsidy application effects on productivity improvement: evidence from Japanese SMEs” Small Business Economics 60(4): 1631-1658.

