民泊を始めるには?住宅宿泊事業の届出と旅館業許可の違い

✏️ この記事の執筆者

フロル行政書士事務所(横浜)
許認可・会社設立・補助金申請・相続のご相談は
🌸 フロル行政書士事務所の公式サイトへ


「空いている実家や部屋を民泊にして、旅行者に貸してみたい」

「『民泊新法の届出』と『旅館業の許可』って、どっちを取ればいいの?」

「届出だけで簡単に始められるって聞いたけど、本当にそれで大丈夫?」

インバウンドの旅行者が戻ってきて、空き家や使っていない部屋を民泊にしたいというご相談が増えています。ところが調べ始めると、「住宅宿泊事業法」「旅館業法」「簡易宿所」「特区民泊」と似たような言葉がたくさん出てきて、何がどう違うのか分からなくなってしまう方も多いのではないでしょうか。

実は、どの制度で始めるかによって、営業できる日数・営業できる場所・必要な設備・手続きの重さがまったく違ってきます。最初の選択を間違えると、「物件を買ったのに営業できない」「思ったほど稼働できない」ということにもなりかねません。

所長 フロル

「民泊=届出だけでOK」と思っていたら、実は年180日までしか営業できなかった…というのは民泊あるあるです(笑)。始める前に、2つの制度の違いをしっかり押さえておきましょう!

目次

そもそも「民泊」とは?3つのルートがある

「民泊」という言葉は法律上の正式な用語ではなく、一般に住宅(戸建てやマンションの一室など)を使って、旅行者などにお金をもらって宿泊させることを指します。

日本では、宿泊料を受けて人を泊める営業は、原則として旅館業法の許可が必要です。そのうえで、住宅を活用した宿泊サービスを広げるために、平成30年(2018年)6月に「住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)」が施行されました。現在、民泊を合法的に行うルートは主に次の3つです。

  • 住宅宿泊事業法に基づく届出(いわゆる「新法民泊」)
  • 旅館業法に基づく許可(主に「簡易宿所営業」や「旅館・ホテル営業」)
  • 国家戦略特別区域法に基づく認定(いわゆる「特区民泊」。実施できるのは特区に指定され、条例を定めた一部の自治体のみ)

特区民泊は実施できる地域が限られているため、本記事では多くの方が検討する「住宅宿泊事業の届出」と「旅館業許可」の2つを中心に比較していきます。

住宅宿泊事業の届出と旅館業許可の違い【比較表】

まずは、両者の違いを一覧で確認してみましょう。

項目住宅宿泊事業(民泊新法)旅館業(簡易宿所営業など)
根拠法住宅宿泊事業法旅館業法
手続きの種類届出許可
手続き先都道府県知事(保健所設置市・特別区等で事務を行う場合はその市区長)都道府県知事(保健所設置市・特別区は市区長)。窓口は主に保健所
年間営業日数上限180日制限なし
建物の扱い「住宅」のまま「ホテル・旅館」等の用途
用途地域住居専用地域でも可(ただし条例で制限される場合あり)住居専用地域・工業地域等では原則不可
建築基準法上の用途変更原則不要用途変更部分が200㎡を超える場合は確認申請が必要
主な設備要件台所・浴室・便所・洗面設備客室面積、換気・採光・照明、入浴・洗面設備など(条例による上乗せあり)
フロント(玄関帳場)不要法律上は必須ではないが、条例で設置を求める自治体あり
家主不在時の管理住宅宿泊管理業者への委託が必要な場合あり営業者自身が管理(委託も可)
定期報告2か月ごとに宿泊日数等を報告原則なし(変更時等の届出は必要)

ざっくり言うと、住宅宿泊事業は「始めやすいが営業日数に上限がある」、旅館業許可は「ハードルは高いが本格的に通年営業できる」という違いがあります。

住宅宿泊事業(民泊新法)の届出のポイント

「住宅」であることが前提

住宅宿泊事業の届出をするには、その建物が法律上の「住宅」に当たる必要があります。具体的には、次の2つの要件を満たすことが求められます。

  • 設備要件:台所、浴室、便所、洗面設備が設けられていること
  • 居住要件:「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」「入居者の募集が行われている家屋」「随時その所有者等の居住の用に供されている家屋(別荘やセカンドハウスなど)」のいずれかに当たること

つまり、最初から宿泊専用として建てた建物や、誰も住む予定のない投資用物件は、原則としてこの制度の対象になりません。

⚠️ 年間180日の上限に要注意

住宅宿泊事業で人を宿泊させられる日数は、毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までの1年間で180日が上限です。日数は「泊数」でカウントされ、正午から翌日の正午までを1日として数えます。

さらに、自治体によっては条例で「住居専用地域では平日の営業を禁止」「学校周辺では一定期間の営業を制限」といった区域・期間の上乗せ規制を設けているケースがあります。実際に営業できる日数は180日よりさらに少なくなることもあるため、物件所在地の条例は必ず確認しましょう。

家主居住型と家主不在型

住宅宿泊事業には、事業者(家主)が住宅に住みながら一部を貸す「家主居住型」と、家主が不在となる「家主不在型」があります。家主不在型の場合や、居室の数が5を超える場合は、国土交通大臣の登録を受けた「住宅宿泊管理業者」に管理業務を委託する必要があります。(事業者自身が住宅宿泊管理業者である場合などの例外があります。)

届出後に守るべき義務

届出は「出して終わり」ではありません。営業中は次のような義務があります。

  • 宿泊者の衛生の確保(居室の床面積に応じた宿泊者数の制限、定期的な清掃など)
  • 非常用照明器具の設置、避難経路の表示などの安全確保
  • 外国人観光客向けの外国語による設備の使用方法・交通手段の案内
  • 宿泊者名簿の作成・備付け(本人確認を含む)
  • 騒音・ゴミ出しなど周辺環境への悪影響防止についての宿泊者への説明
  • 周辺住民からの苦情・問い合わせへの対応
  • 玄関など公衆の見やすい場所への標識の掲示
  • 2か月ごとの定期報告(偶数月の15日までに、前2か月分の宿泊日数・宿泊者数等を報告)

💡ポイント:届出は観光庁の「民泊制度運営システム」から電子的に行うこともできます。ただし、添付書類の内容や自治体独自の事前相談・近隣への周知の要否は地域によって異なるため、先に保健所等の窓口へ確認しておくとスムーズです。

旅館業許可(簡易宿所営業)のポイント

旅館業の営業種別

旅館業法では、営業の種類を「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」の3つに分けています。一棟貸しの民泊やゲストハウスなどで多く選ばれているのが簡易宿所営業です。簡易宿所とは、宿泊する場所を多数人で共用する構造・設備を主とする施設のことで、ドミトリー型のゲストハウスやカプセルホテルなどが典型例です。

主な構造設備の基準

簡易宿所営業の場合、客室の延床面積は原則33㎡以上が必要です。ただし、宿泊者数を10人未満とする場合は、「3.3㎡×宿泊者数」以上であればよいとされています。このほか、換気・採光・照明・防湿・排水の設備、宿泊者の需要を満たす入浴設備や洗面設備、便所などが求められ、さらに各自治体の条例で細かな基準が上乗せされていることがあります。

⚠️ 用途地域と建築基準法の壁

旅館業許可で最もつまずきやすいのが、都市計画法上の「用途地域」です。ホテル・旅館は、第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、工業地域、工業専用地域などでは原則として営業できません(第一種住居地域では床面積3,000㎡以下などの条件があります)。

また、住宅をホテル・旅館の用途に変える場合、用途変更する部分の床面積が200㎡を超えるときは建築確認申請が必要です。200㎡以下で確認申請が不要な場合でも、建築基準法の規定(防火・避難等)に適合させる義務自体はなくなりませんので注意が必要です。

⚠️ 無許可営業の罰則

旅館業の許可を受けずに、また住宅宿泊事業の届出もせずに宿泊営業を行うと、旅館業法違反として6か月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科の対象となります。「友人に頼まれて少しだけ…」でも、宿泊料を受けて反復継続していれば営業と判断され得るため、軽く考えないようにしましょう。

どちらの制度でも必ず確認すべきこと

住宅宿泊事業でも旅館業でも、次の点は共通して事前確認が欠かせません。

  • 消防法令への適合:宿泊施設として自動火災報知設備や誘導灯などの設置が必要になる場合があります。消防署で「消防法令適合通知書」の交付を受けることが、多くの場合で手続きの前提になります。
  • マンションの管理規約:管理規約で民泊(住宅宿泊事業)が禁止されていないかを確認します。住宅宿泊事業の届出では、規約の写しや、管理組合に禁止の意思がないことを確認した書類の提出が求められます。
  • 賃貸物件の場合の転貸承諾:借りている物件で民泊をする場合は、賃貸人(オーナー)の承諾が必要です。
  • 自治体の条例・指導要綱:近隣住民への事前周知や説明会の実施を求める自治体もあります。

【事例】Aさんは、相続した郊外の戸建てを民泊にしようと考え、旅館業の簡易宿所営業で通年営業を目指していました。ところが調べてみると、物件は第一種低層住居専用地域にあり、旅館業の許可は取れないことが判明。そこで方針を切り替え、住宅宿泊事業の届出で年180日以内の運営とし、残りの期間はマンスリー賃貸として活用することにしました。事前に用途地域を確認していなければ、リフォーム費用をかけた後に営業できないと気付くところでした。

【事例】Bさんは、駅近の中古ビルを購入してゲストハウスを開業予定でした。用途地域は商業地域で旅館業は可能でしたが、用途変更する床面積が200㎡を超えるため建築確認申請が必要に。さらに消防設備の追加工事も必要となり、開業時期を当初の予定から数か月遅らせることになりました。物件購入前に保健所・建築・消防の三方面へ事前相談しておくことが、スケジュールと予算を守るカギです。

民泊を始めるまでの流れ【STEP形式】

STEP1:事業計画を立て、制度を選ぶ

年間どれくらい稼働させたいか、家主が住みながら貸すのか不在で貸すのか、などを整理します。180日の上限で採算が合うかどうかが、制度選びの大きな分かれ目です。

STEP2:物件の法的条件を調査する

用途地域、建物の構造・面積、条例による区域制限、マンション管理規約、賃貸借契約の内容などを確認します。購入・賃借の契約前に行うのが理想です。

STEP3:保健所・建築担当・消防署へ事前相談

図面を持参して、必要な設備や手続きを確認します。自治体によっては事前相談が必須となっていることもあります。

STEP4:設備工事・消防法令適合通知書の取得

必要な改修工事や消防設備の設置を行い、消防署の検査を受けて消防法令適合通知書の交付を受けます。

STEP5:届出または許可申請

住宅宿泊事業なら届出書と添付書類を提出し、届出番号の通知を受けます。旅館業なら許可申請書を提出し、保健所の施設検査を経て許可を受けます。

STEP6:営業開始・継続的な義務の履行

標識の掲示、宿泊者名簿の管理、住宅宿泊事業なら2か月ごとの定期報告など、営業開始後の義務をきちんと守って運営します。

💡コツ:民泊は「保健所(旅館業・衛生)」「建築(用途地域・建築基準法)」「消防(消防設備)」と、関係する役所が複数にまたがるのが特徴です。窓口ごとに言われることをメモにまとめ、矛盾や漏れがないかを整理しながら進めると、手戻りを防げます。

まとめ

民泊を始めるルートは1つではなく、それぞれにメリット・デメリットがあります。

  • 住宅宿泊事業(届出):住居専用地域でも始めやすく、建物も「住宅」のままでOK。ただし年間180日の上限や条例による制限、2か月ごとの定期報告がある
  • 旅館業許可(簡易宿所など):営業日数の制限なしで本格運営が可能。ただし用途地域・建築基準法・構造設備のハードルが高い
  • どちらでも、消防法令・管理規約・条例の確認は必須。物件の契約前に調べるのが鉄則

「とりあえず物件を押さえてから考えよう」は、民泊ではいちばん避けたいパターン(笑)。どちらの制度が自分の計画に合うのか、物件の条件は大丈夫か、迷ったときはお気軽にご相談ください。届出・許可申請はもちろん、事前調査の段階からサポートいたします。

▼ご相談はこちらをクリック

あわせて読みたい

免責事項

本記事の内容は、投稿時点(令和8年10月)の情報に基づいて作成しています。法令や各自治体の条例・運用は改正される場合があります。また、実際の手続きや要件は物件の所在地や個別の事情によって異なりますので、具体的な案件については、所轄の保健所・建築担当部署・消防署等の関係機関や専門家にご確認ください。

廣岡 慶之
フロル行政書士事務所 代表行政書士
フロル行政書士事務所 代表行政書士の廣岡慶之です。鉄道会社にて駅工事設計・官公署との調整など安全運行を支える業務に従事。その後、コンサルティング会社勤務を経て行政書士として独立。行政書士のほか、FP・IT資格・簿記を保有し、手続き支援にとどまらない経営・資産形成アドバイスが強みです。「想いを形に。未来を設計する。」をモットーに、起業から人生設計まで伴走型でサポートします。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次