デジタル遺産(ネット銀行・暗号資産・SNS)の相続手続きはどうする?

スマートフォンとパソコンを前に、ネット銀行や暗号資産などデジタル遺産の相続手続きについて考える家族のイメージ

✏️ この記事の執筆者

フロル行政書士事務所(横浜)
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「親のスマホの中に、ネット銀行の口座があるらしいけど、パスワードが分からない…」
「暗号資産を持っていたと聞いたけど、どの取引所を使っていたのかすら分からない」
「SNSのアカウント、勝手に解約したり放置したりして大丈夫なの?」

こうした「デジタル遺産」に関するご相談が、ここ数年で急増しています。通帳や証書のような紙の記録が残らないため、ご家族がその存在にすら気づかないまま、相続手続きが宙に浮いてしまうケースも少なくありません。

この記事では、ネット銀行・暗号資産・SNSアカウントなど、デジタル遺産の相続手続きについて、行政書士の視点からわかりやすく解説します。

所長 フロル

デジタル遺産のご相談、正直ここ数年でめちゃくちゃ増えてます…!「パスワードが分からなくて何も手続きできない」というお声が本当に多いんです。今日はその整理の仕方を一緒に見ていきましょう(笑)

目次

デジタル遺産とは何か

「デジタル遺産」は法律上の正式な用語ではありませんが、一般的には、通帳や証書のような紙の形を持たず、インターネット上のアカウントとして管理されている財産や情報の総称として使われています。具体的には次のようなものが挙げられます。

  • ネット銀行・ネット証券の口座
  • 暗号資産(ビットコインなどの仮想通貨)
  • 電子マネー・各種ポイント
  • SNSアカウント・ブログ・クラウドストレージ
  • 動画配信サービスなどのサブスクリプション契約

このうち、財産的価値があり相続手続きの対象となるのは、主にネット銀行の預金や暗号資産です。SNSアカウントなどは財産的価値こそ乏しいものの、放置すると別のトラブルを招くことがあります。

デジタル遺産の相続でトラブルが起きやすい理由

存在に気づかれない

紙の郵送物が届かないため、ご家族が資産の存在自体を知らないまま数年が経過してしまうことがあります。特にネット銀行や暗号資産は、本人がスマートフォンのアプリだけで完結させているケースが多く、遺品整理の中でようやく発覚するということも珍しくありません。

パスワード・二段階認証の壁

本人しか知らないID・パスワード、スマートフォンの生体認証などがあると、ご遺族はログインすらできません。推測でパスワードを入力し続けてアカウントがロックされてしまうというトラブルも実際に起きています。

相続税申告の期限との兼ね合い

相続税の申告・納付期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内と定められています。デジタル資産の把握が遅れると、財産の評価や申告書の作成が期限内に間に合わなくなるおそれがあります。

資産の種類別に見る相続手続き

ネット銀行の場合

基本的な流れは通常の銀行と同じで、口座のある銀行に死亡の連絡をし、残高証明書を取得したうえで、相続人全員の戸籍謄本や遺産分割協議書等を提出して解約・払戻しを行います。通帳が存在しないため、メールの受信履歴、スマートフォンのアプリ、確定申告書の控えなどから口座の存在を探し出す必要があります。

暗号資産(仮想通貨)の場合

暗号資産交換業者(取引所)に対し、口座名義人が死亡した旨を連絡し、相続手続きの案内を受けるのが基本の流れです。必要書類や手続きの詳細は取引所ごとに異なります。一方で、取引所を介さず自分のウォレットで秘密鍵(シードフレーズ)を自己管理していた場合、その秘密鍵が分からなければ事実上、誰も資産を引き出せなくなるリスクがあります。なお、暗号資産は相続税の課税対象財産であり、死亡時点の時価で評価する必要がある点にも注意が必要です。

SNS・クラウド・サブスクリプションの場合

法律上の「財産」には当たらないものが多いですが、放置するとアカウントの乗っ取り被害や、意図しない料金請求が続くことがあります。多くのサービスには「追悼アカウント」への切り替え制度や、遺族による解約手続きの窓口が用意されています。

種類主な連絡先必要になりやすい書類特有の注意点
ネット銀行各銀行のコールセンター・相続専用窓口死亡の届出、戸籍謄本一式、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書 等通帳がなく口座の存在に気づきにくい
暗号資産(仮想通貨)暗号資産交換業者(取引所)のサポート窓口死亡を証明する書類、戸籍謄本一式、相続関係説明図 等秘密鍵が不明だと資産を引き出せないおそれ
SNS・クラウド等各サービスの追悼アカウント窓口・カスタマーサポート死亡を証明する書類、続柄が分かる書類(サービスにより異なる)財産的価値は乏しいが、放置は乗っ取りリスク

デジタル遺産を含む相続手続きの流れ(STEP形式)

STEP1.デジタル遺産の有無を調査する
スマートフォン・パソコンの中身、メールの受信履歴、郵便物、確定申告書の控えなどから、口座や取引所の手がかりを探します。

STEP2.相続人・遺産の全体像を確定する
戸籍謄本を収集して相続人を確定し、相続関係説明図や財産目録を作成します。

STEP3.各サービスの窓口へ死亡の届出・必要書類を提出する
銀行や取引所ごとに指定された書式・添付書類に沿って手続きを進めます。

STEP4.遺産分割協議を行い、払戻し・移転手続きを行う
相続人全員の合意内容を遺産分割協議書にまとめ、各窓口での解約・移転手続きを行います。

STEP5.必要に応じて相続税を申告する
暗号資産を含めた財産評価額が基礎控除額を超える場合は、期限内の申告が必要です。

⚠️ 注意点:パスワードの安易な解読・不正アクセスはNG

「本人になりすましてログインしてしまえばいい」と考える方もいますが、これは避けるべきです。本人以外が無断でアカウントにアクセスする行為は、不正アクセス禁止法に触れる可能性があります。また、パスワードを何度も間違えて入力するとアカウントが完全にロックされ、正規の相続手続きを経ても復旧できなくなる場合があります。まずは各サービスの公式な相続・死亡時対応窓口に連絡することが原則です。

💡 ポイント:最も有効なのは生前対策

デジタル遺産のトラブルの多くは、「存在を誰も知らなかった」ことに起因します。生前のうちに、次のような対策をしておくことで、ご家族の負担は大きく軽減されます。

  • 利用しているネット銀行・取引所・サブスクリプションを一覧にしておく(エンディングノート等)
  • パスワード自体は書かず、家族が管理会社にアクセスできる手がかりだけ残しておく
  • 暗号資産については、秘密鍵の保管方法を信頼できる人に伝えておく、または専門の管理サービスを利用する

「父のスマートフォンの中に、聞いたこともない暗号資産取引所のアプリが入っていました。ログインパスワードが分からず、サポートセンターに死亡を証明する書類や戸籍謄本を提出し、半年近くかけてようやく解約・払戻しができました」(60代・ご相続人)

このように、デジタル遺産は発覚から解決までに時間がかかりやすいという特徴があります。心当たりのある方は、できるだけ早めに調査を始めることをおすすめします。

まとめ

デジタル遺産は、紙の記録が残らないという性質上、家族に気づかれにくく、放置されがちな財産です。ネット銀行・暗号資産・SNSなど、資産の種類ごとに連絡先や必要書類、注意点が異なるため、まずはどのようなデジタル遺産が存在するのかを丁寧に調査することが第一歩になります。また、こうしたトラブルを防ぐ最も効果的な方法は、ご本人が元気なうちの「生前対策」です。エンディングノートの活用や、家族との情報共有について、早めに検討しておくとよいでしょう。

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免責事項

本記事は令和8年8月時点の法令・制度に基づき、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の事案における具体的な手続きや財産評価については、必ず専門家にご確認ください。なお、暗号資産の相続税評価や準確定申告等の税務判断は税理士の、不動産の相続登記や紛争性のある遺産分割については司法書士・弁護士の専門分野となり、行政書士の業務範囲外となる場合があります。当事務所では、必要に応じて各専門家と連携しながらサポートいたします。

廣岡 慶之
フロル行政書士事務所 代表行政書士
フロル行政書士事務所 代表行政書士の廣岡慶之です。鉄道会社にて駅工事設計・官公署との調整など安全運行を支える業務に従事。その後、コンサルティング会社勤務を経て行政書士として独立。行政書士のほか、FP・IT資格・簿記を保有し、手続き支援にとどまらない経営・資産形成アドバイスが強みです。「想いを形に。未来を設計する。」をモットーに、起業から人生設計まで伴走型でサポートします。
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