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フロル行政書士事務所(横浜)
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「相続人の一人である母が認知症で、施設に入っている。遺産分割協議って、どうやって進めればいいの?」
「意思確認ができない相続人がいるまま、他のきょうだいだけでハンコを押しても大丈夫?」
「銀行や法務局から『成年後見人をつけてください』と言われたけど、そもそも成年後見制度ってなに?」
相続の相談を受けていると、こうした声は決して珍しくありません。高齢化が進む中、相続人の中に認知症の方がいるケースは今後ますます増えていきます。「家族なんだから、代わりにサインしても問題ないはず」と思ってしまいがちですが、実はここに大きな落とし穴があります。
所長 フロルそれ、実はとっても大事なポイントなんです!「家族だから」で進めてしまうと、後で遺産分割協議そのものが無効になってしまうこともあるんですよ。今日は認知症の相続人がいる場合の遺産分割と、成年後見制度との関係を一緒に整理していきましょう!
遺産分割協議は、相続人全員が話し合いの内容を理解した上で合意する「法律行為」です。認知症により判断能力が低下し、遺産分割の内容やその意味を理解できない状態にある相続人がいる場合、その方は有効に意思表示をすることができません。
この状態のまま、家族が本人の代わりに署名・押印したり、「本人の意思を推測して」協議を進めてしまうと、その遺産分割協議は無効になる可能性が非常に高いです。無効な協議書では、不動産の相続登記や、預貯金の払い戻し手続きも進められません。
「認知症の母を除いて、きょうだい3人だけで遺産分割協議書を作成し、いざ不動産の相続登記をしようとしたら法務局から『母の分の手続きがないと受理できません』と指摘された」——このようなご相談は実際に多く寄せられます。結局、成年後見の申立てからやり直すことになり、想定より数ヶ月も手続きが長引いてしまいました。
判断能力が不十分な相続人がいる場合、遺産分割協議を有効に進めるためには、成年後見制度を利用して、本人に代わって法律行為を行う人(成年後見人等)を選任してもらう必要があります。
成年後見制度は、認知症・知的障害・精神障害などにより判断能力が不十分な方を保護し、支援するための制度です。家庭裁判所に申立てを行い、本人の判断能力の程度に応じて、以下のいずれかが選任されます。
| 類型 | 本人の判断能力の程度 | 付与される権限 |
|---|---|---|
| 後見 | ほとんど判断できない | 包括的な代理権・取消権 |
| 保佐 | 著しく不十分 | 特定行為の同意権・取消権(遺産分割協議も含まれる) |
| 補助 | 不十分(軽度) | 申立てにより定めた特定行為の同意権等 |
遺産分割協議のように重要な財産行為を本人に代わって行うには、原則として「成年後見人」が選任されているケースが中心になります。保佐・補助の場合は、本人が自ら協議に参加しつつ、保佐人・補助人の同意を得る、あるいは代理権が付与されていればその代理権に基づいて対応する、という形になります。
成年後見人の選任は、次のようなSTEPで進みます。
本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。申立てができるのは、本人・配偶者・四親等内の親族などです。医師の診断書、本人の財産に関する資料、戸籍謄本などの添付書類を準備します。
申立書と必要書類一式を家庭裁判所に提出します。遺産分割協議のために申立てを行う場合は、その旨を申立ての事情説明書に記載するのが一般的です。
家庭裁判所の調査官による本人面談や親族への意向照会が行われます。判断能力の程度によっては、医師による鑑定が実施される場合もあります。
家庭裁判所が後見開始の審判を行い、後見人を選任します。親族が選任されることもありますが、財産状況や親族間の事情によっては、弁護士・司法書士などの専門職後見人が選任されるケースも少なくありません。
選任された成年後見人が、本人に代わって遺産分割協議に参加します。ここで注意が必要な点があります。
後見人となった方(例えば配偶者や子)自身も同じ遺産分割の相続人であることは、実務上非常に多いパターンです。この場合、後見人と本人(被後見人)の利益が対立する「利益相反」の状態になります。
このようなケースでは、後見人はそのまま遺産分割協議に代理人として参加することができず、家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申し立てる必要があります(ただし、後見監督人が選任されている場合は、後見監督人が本人を代表するため、特別代理人の選任は不要です)。特別代理人が、利益相反する場面に限って本人の代理を行います。
この手続きを踏まずに遺産分割協議を進めてしまうと、協議が無効となるおそれがあるため、十分な注意が必要です。
成年後見の申立てから審判が下りるまでは、一般的に1〜4ヶ月程度かかることが多く、鑑定が必要な場合はさらに時間を要します。相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)や、相続放棄の期限(原則3ヶ月以内)との兼ね合いも考える必要があるため、認知症の相続人がいることが分かった時点で、できるだけ早く申立ての準備に着手することが重要です。
また、成年後見は一度開始すると、遺産分割協議が終わった後も本人が亡くなるまで原則として続きます。「遺産分割のためだけに一時的に利用する」制度ではない点も、事前に理解しておく必要があります。
行政書士は、成年後見開始の申立書や、それに添付する財産目録・事情説明書などの書類作成をサポートすることができます。また、遺産分割協議書の作成や、相続人・相続財産の調査についても対応可能です。
一方で、家庭裁判所への申立てにおける代理人としての活動(審判手続きの代理)は弁護士の職務範囲であり、行政書士が行うことはできません。また、後見人にご本人が就任するかどうかの判断や、家庭裁判所の審判そのものについては、行政書士が関与できる範囲外です。ケースに応じて、弁護士・司法書士など他の専門家と連携しながら進めることになります。
相続人の中に認知症など判断能力が低下した方がいる場合、家族だけの判断で遺産分割協議を進めることはできません。有効な協議とするためには、家庭裁判所に成年後見等の申立てを行い、後見人(保佐人・補助人)を選任してもらう必要があります。後見人自身も相続人である場合は、特別代理人の選任が必要になる点も見落とされがちなポイントです。申立てから審判まで一定の時間がかかるため、認知症の相続人がいると分かった時点で早めに準備を始めることが、円滑な相続手続きへの近道です。
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本記事の内容は、投稿(令和8年9月)時点の情報に基づいて作成しています。法令の改正等により内容が変更される場合がありますので、実際の手続きにあたっては最新の情報をご確認いただくか、専門家にご相談ください。また、本記事で触れた成年後見開始の審判手続きにおける代理業務は弁護士の職務範囲であり、行政書士業務の範囲外です。行政書士は申立書類の作成支援等、業務範囲内でのサポートを行います。

