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フロル行政書士事務所(横浜)
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「最近、父と電話で話していても、同じ話を何度も繰り返す…」「母の代わりに銀行へ行ったら、『ご本人でないと手続きできません』と言われてしまった…」「将来、介護施設の費用のために実家を売ろうと思っているけれど、いざという時に動けるか不安…」
ご両親の年齢が上がってくると、こうした不安を感じる方は少なくありません。そしてこの不安は、決して他人事ではなくなってきています。
所長 フロル「うちはまだ大丈夫」そう思っていた方からのご相談が、実はとても多いんです!今日は「元気なうちにしかできない対策」についてお話しますね。
厚生労働省が公表した最新の将来推計(令和5年度老人保健事業推進費等補助金、九州大学・二宮利治教授の研究に基づく)によると、認知症高齢者の数は次のように推移すると見込まれています。
| 年 | 認知症高齢者数 | 高齢者に占める割合 |
|---|---|---|
| 2022年 | 443.2万人 | 12.3% |
| 2025年 | 471.6万人 | 12.9% |
| 2030年 | 523.1万人 | 14.2% |
| 2040年 | 584.2万人 | 14.9% |
| 2060年 | 645.1万人 | 17.7% |
さらに、認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)の高齢者も、2022年時点で558.5万人(有病率15.5%)と推計されており、認知症とMCIを合わせた有病率は約28%にのぼります。つまり、2022年時点で高齢者の約4人に1人以上が、すでに認知症またはその予備群にあたるということです。
厚生労働省も「誰もが認知症になり得る」という認識を示しており、自分の親、あるいは自分自身も例外ではないという前提で、将来に備えておく必要が高まっています。
認知症などによって判断能力が低下すると、本人の意思に基づく手続きが難しくなります。具体的には、次のようなことが挙げられます。
こうした手続きは、たとえ家族であっても、本人に代わって自由に行うことはできません。銀行や法務局、不動産会社などは、本人の意思確認ができない場合、手続きを止めてしまいます。これがいわゆる「資産凍結」です。
ご相談にいらしたある方は、こう話していました。「父が施設に入ることになり、入居費用のために実家を売ろうとしたんです。でも、不動産会社から『ご本人の意思確認ができないと契約できません』と言われて…。結局、成年後見制度を使うしかなく、手続きに何ヶ月もかかってしまいました。」
このように、本人の判断能力が低下してから対策を考えようとしても、選べる手段は限られてしまいます。
本人の判断能力が低下した後の財産管理は、原則として家庭裁判所が選任する成年後見人が行う「成年後見制度」によることになります。成年後見人には、家族が選ばれることもありますが、専門職(弁護士・司法書士など)が選ばれることもあります。また、本人の財産を守ることが制度の目的であるため、資産の積極的な活用(不動産の売却や投資など)には家庭裁判所の許可が必要になるなど、一定の制約がある点も知っておく必要があります。
こうした「資産凍結」に備える方法のひとつとして、近年注目されているのが「家族信託(民事信託)」です。家族信託は、信託法(2006年改正)に基づく仕組みで、ご本人(委託者)が信頼できる家族(受託者)に財産の管理・処分を託す契約です。
家族信託の最大のポイントは、本人の判断能力があるうちに契約を結んでおく必要があるという点です。判断能力が低下してからでは、原則としてこの契約を結ぶことができません。
家族信託は、次のような流れで進めていくのが一般的です。
STEP1 家族で話し合う
誰の、どの財産について、何のために信託を活用したいのかを、家族全員で話し合います。ここが最も重要な出発点です。
STEP2 信託の内容を設計する
受託者(財産を管理する家族)、信託する財産の範囲、管理の方法、信託の終了条件などを具体的に決めていきます。
STEP3 信託契約を締結する
話し合った内容を契約書にまとめ、公正証書などの形で信託契約を締結します。
STEP4 信託登記・信託専用口座の開設
不動産を信託財産に含める場合は信託登記を行い、信託財産を管理するための専用口座を開設します。
家族信託と成年後見制度は、どちらか一方が優れているというものではなく、目的や家族の状況によって適したものが異なります。両制度の特徴を比較すると、次のような違いがあります。
| 比較項目 | 成年後見制度 | 家族信託 |
|---|---|---|
| 利用できる時期 | 判断能力低下後 | 判断能力があるうちのみ |
| 財産管理を行う人 | 家庭裁判所が選任する後見人 | 契約で決めた受託者(家族等) |
| 裁判所の関与 | 継続的な監督・報告が必要 | 基本的に関与しない |
| 財産活用の自由度 | 本人保護を目的とし制約がある | 契約内容に応じて柔軟に設計できる |
「成年後見制度は手続きが重い」「家族信託なら万能」といった単純な話ではなく、ご家族の資産状況や将来の希望に合わせて、どちらの制度が合うのかを検討することが大切です。
家族信託は、あくまで「財産の管理・処分」を託す契約です。そのため、入院時の医療同意や、介護施設への入所契約といった、いわゆる「身上監護(しんじょうかんご)」と呼ばれる本人の生活・医療・介護に関する判断は、家族信託の対象には含まれません。
こうした身上監護の部分まで心配な場合は、家族信託と並行して、将来的に成年後見制度(特に、判断能力があるうちに後見人をあらかじめ決めておく「任意後見制度」)を検討しておくご家庭もあります。家族信託は財産凍結への備えとして有効ですが、それだけで老後のすべてに備えられるわけではない、という点も押さえておきたいポイントです。
家族信託を検討する際、契約書の内容を決める前に、まずは家族間で次のような点を話し合っておくことをおすすめしています。
特に、信託に関わらないきょうだいなど他の家族への説明は、後々の相続トラブルを避けるためにも欠かせません。「なぜこの財産だけ信託にしたのか」「他の家族の取り分はどうなるのか」といった点について、早い段階で家族全員が納得できる形にしておくことが大切です。
家族信託を検討する際は、どの専門家がどこまで対応できるのかを知っておくことも重要です。
そのため、実際の家族信託の設計・実行にあたっては、行政書士が司法書士・税理士と連携しながら進めていく形になります。弊所でも、必要に応じて司法書士・税理士とチームを組み、ワンストップでご相談いただける体制を整えています。
家族信託に関する不動産の信託登記件数は、法務省の登記統計を引用した民間の調査によると、近年増加傾向にあると紹介されています。一方で、成年後見制度の利用件数(成年後見関係事件の概況等)は、直近ではほぼ横ばいで推移していると紹介されています。
いずれも一次情報での詳細な確認が必要な部分はありますが、「判断能力が低下する前の対策」として家族信託への関心が高まっている傾向自体は、多くの専門家が指摘するところです。
厚生労働省の推計では、認知症高齢者は2025年に471.6万人、2040年には584.2万人に達すると見込まれています。そして、本人の判断能力が低下してしまうと、預貯金の引き出しや不動産の売却といった手続きが、家族であっても自由にはできなくなる「資産凍結」のリスクがあります。
成年後見制度は判断能力が低下した後でも利用できる制度ですが、家族信託は判断能力があるうちにしか契約できないという時間的な制約があります。どちらの制度が合うかはご家族の状況によって異なりますが、まず大切なのは、元気なうちに家族で将来のことを話し合っておくことです。制度の選択は、そのあとに考えても遅くはありません。
本記事の内容は、投稿時点(令和8年10月)の情報に基づいて作成しています。制度の詳細や個別のご状況については、専門家にご確認ください。

