✏️ この記事の執筆者
フロル行政書士事務所(横浜)
許認可・会社設立・補助金申請・相続のご相談は
🌸 フロル行政書士事務所の公式サイトへ

「実家の土地を相続したけれど、住む予定もないし、売れそうもない…」「遠方にあって管理にも手間がかかるし、正直手放したい」「でも、土地って勝手に放棄できるものなの?」——相続をきっかけに、こうした悩みを抱える方は少なくありません。使う予定のない土地を持ち続けると、固定資産税や草刈り・雪下ろしなどの管理負担が毎年発生し続けます。そんな中、「国に引き取ってもらう」という選択肢があることをご存知でしょうか。
所長 フロル土地を国に引き取ってもらえる制度があるって、意外と知られていないんですよね〜。でも「誰でも」「どんな土地でも」引き取ってもらえるわけではないので、今日はその実績と費用を一緒に見ていきましょう!
相続土地国庫帰属制度は、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」を根拠として、令和5年(2023年)4月27日から始まった制度です。相続、または相続人に対する遺贈によって土地を取得した方が、一定の要件を満たした場合に、その土地の所有権を国に引き取ってもらうことができます。
申請の窓口は、土地の所在地を管轄する法務局です。売買によって取得した土地はこの制度の対象外であり、あくまで相続・遺贈によって「望まず手に入れた」土地を対象としている点がポイントです。
法務省が令和8年6月19日に公開した「相続土地国庫帰属制度の統計」(令和8年5月31日現在)によると、制度開始からの実績は以下のとおりです。
| 地目 | 件数 |
|---|---|
| 田・畑 | 2,169件 |
| 宅地 | 1,916件 |
| 山林 | 850件 |
| その他 | 610件 |
| 総数 | 5,545件 |
| 種目 | 件数 |
|---|---|
| 宅地 | 1,018件 |
| 農用地 | 879件 |
| 森林 | 186件 |
| その他 | 679件 |
| 総数 | 2,762件 |
令和8年5月31日現在で、申請は5,545件、国庫への帰属が認められたものは2,762件となっています。ここで注意したいのは、申請件数は「地目」、帰属件数は「種目」という異なる分類基準で集計されているという点です。地目と種目は土地の区分の考え方が異なるため、この二つの数字を単純に比較して「承認率」や「宅地は通りやすい」といった計算をすることはできません。あくまで、それぞれ別の集計として理解しておく必要があります。また、これらの件数は土地の筆数や面積そのものを示すものではなく、承認申請の件数である点にもご注意ください。
相続土地国庫帰属制度を利用する際の大まかな流れは、次のとおりです。
STEP1 事前相談
土地の所在地を管轄する法務局(本局)で、事前相談を行います。
STEP2 申請書類の準備・提出
申請書や土地の状況を示す資料等を準備し、法務局に提出します。この際、土地1筆につき14,000円の審査手数料を納める必要があります。
STEP3 法務局による審査
法務局の担当者による書面審査や、必要に応じた現地調査が行われます。審査には一定の期間がかかります。
STEP4 承認・負担金の納付
承認されると通知が届き、10年分の土地管理費用に相当する負担金を納付します。
STEP5 国庫帰属
負担金の納付が完了すると、その時点で土地の所有権が国に移転します。
相続土地国庫帰属制度は、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではありません。一般的に、次のような土地は申請が認められないとされています。
管理が大変だからこそ国に引き取ってほしい土地ほど、実は要件を満たしにくいという面もあります。申請前に、現状の土地がこうした条件に当たらないか、しっかり確認することが欠かせません。
「古い空き家が建ったままの実家の土地を、そのまま国に引き取ってもらえると思っていた」というご相談を受けたことがあります。しかし建物が残っている状態では申請の対象になりません。解体して更地にする、あるいは他の方法を検討する必要があり、想定外の費用や手間が発生するケースもあります。
この制度を利用する際には、大きく2つの費用がかかります。
負担金の具体的な算定方法や金額は土地の種類・面積によって変わるため、個別の金額については法務省の案内で必ず確認するようにしてください。
「要らない土地」を手放す方法としては、相続土地国庫帰属制度のほかにも選択肢があります。それぞれの特徴を整理してみましょう。
| 方法 | 対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| 相続土地国庫帰属制度 | 特定の土地のみ | 一定の要件を満たせば、土地だけを選んで国に引き取ってもらえる。審査手数料・負担金が必要 |
| 相続放棄 | 相続財産全体 | 土地だけでなく、預貯金なども含めた相続そのものを放棄する手続き。土地だけを手放すことはできない |
| 売却 | 買い手がいる土地 | 買い手を見つける必要があるが、対価を得られる可能性がある |
相続放棄は「相続そのものを放棄する」手続きであり、土地だけを選んで手放す手続きではありません。預貯金などの財産も含めて一切を受け取らないことになるため、土地だけが要らない場合に安易に選ぶと、他の財産も失ってしまいます。どの方法が適しているかは、相続財産全体の内容を踏まえて検討する必要があります。
相続土地国庫帰属制度を検討する際、行政書士が関わることができる業務と、他の専門家にお願いすべき業務を整理しておきましょう。
なお、承認申請の手続きそのものをご本人に代わって行えるかどうかについては、法務省の案内等で個別に確認が必要な点です。行政書士としては、申請に必要な書類の作成を支援する形でサポートすることができます。
相続した土地を国庫帰属制度で手放す場合でも、その前提として相続登記(名義変更)が必要になる場面があります。相続登記は令和9年3月末までに行うことが義務化されており、期限内に対応しないと罰則の対象になる可能性もあります。土地の扱いを検討する際は、登記の期限も合わせて確認しておくと安心です。
相続土地国庫帰属制度は、使う予定のない土地を国に引き取ってもらえる貴重な選択肢です。令和8年5月31日現在で申請は5,545件、帰属が認められたものは2,762件となっており、制度の活用は着実に進んでいます。
ただし、建物がある土地や境界が明らかでない土地などは対象外となり、審査手数料14,000円(返還不可)や、原則20万円の負担金といった費用もかかります。相続放棄や売却といった他の方法との違いを理解した上で、ご自身の土地がどの方法に適しているかを見極めることが大切です。そして、こうした土地の扱いは、相続が起きてから慌てて考えるのではなく、できれば持ち主になる前の段階で家族で話し合っておくことが、後々の負担を減らす近道になります。
本記事の内容は、投稿時点(令和8年10月)の情報に基づいて作成しています。制度の詳細や最新の金額等については、法務省の公式案内をご確認ください。

